失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】

もうひとつの祈り




「ちょちょ…ちょっと…」

助手席から強引に引きずり出されて

前のめりに転びそうになった僕を

車の脇に立たせて

彼は真面目な顔で僕に言った

「君は神父に裏切られてあちらの神

には奇跡を願っていないんだろう?

私は神を信じても疑ってもいないが

君の祈りの効力は信じる…あちらが

ダメならこちらで良いじゃないか」

「そ…そんな…」

彼は僕の躊躇に声を荒げた

「兄さんが見つからなくても構わな

いのか!」



逆だ…

あの時僕が彼に言ったことを

そっくり返されてる



「なんで…そんな…」

僕は少し泣きそうになっていた

「なんで…あなたの不利なこと…僕

にそんなに…」

「わからないのか!君はあの時私に

その不利なことをしたんだぞ!私が

生き延びて永久に君を脅迫し続ける

かも知れなかったんだぞ?そんなバ

カな子を私はいとおしく思ってしま

ったんだ!私はおとなしくあの時暗

殺されていれば良かった…あのあと

の私は君の見た崇高で御大層な何か

に魂を握られてしまった!元に戻る

すべが見つからない…悪いが今回は

私の言うことに従ってもらう…早く

歩け…私と一緒に来るんだ!」


彼の言葉には強い力があった


(神さまには見られてたな)


不意にあの時のヤツの言葉が

頭の中をよぎった

あたりはすでに夕闇にまぎれていた





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