失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「いつからいたの?」
「3分くらい前からかな」
笑いをこらえながら彼が答える
「ずっと見てた…とか?」
「いつ気づくかな…と…観察してい
た…サイレンサーで後ろから撃たれ
ても気づかないかもな」
「考えごとしてたんだよ」
「私に気がつかないほど一所懸命に
なにを考えてたんだ?」
僕は車の中で父と話したことを
彼に言った
「…また…ヤブ蛇か」
彼は額に右手を当てて目を閉じた
「だからさ…それどういう意味?」
「ああ…もういい」
彼はヤブヘビの意味を
またもや教えてくれなかった
「そこを超えなければ許されないと
でも言わんばかりだな…参った」
彼は深いため息をついた
「…あなたの方が詳しいでしょ?
僕は兄貴の親父さんには2回しか会
ってないから」
「ああ…確かにそうだ…君は正しい
よ…憂鬱になるくらいな」
彼が所在なげに立ち尽くすのを見て
僕はなんだか不愉快になっていた
それは怒りに似ていた