失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
でもあの日から
この職場は勉強の場ではなくなり
日々の焦躁と空虚を
忙しさで埋める場所
となった
店長と店を紹介してくれた同級生
にだけ状況を伝えた
それ以後は僕の方から
厨房とウェイターだけの仕事に
してもらった
思考や機転を使うような仕事は
もう無理だった
学ぼうというような前向きな
気持ちの余裕は1ミリもなくなった
酒を飲むようになり
僕は店の残り物や
オーダーミスの酒をこっそり
もらって飲むようになった
さほど酒は強くはないのに
家で無茶な飲み方をしていたら
店の薄いジンライムくらいでは
酔わなくなり
それでも思考が鈍くなるのがよくて
気持ちのつらい日には
つい手が出るようになった
自分がこんなになるって
そんな事にも気づかない
ちょっとずつ汚れていくから
自分でも気がつけないんだ
だって感覚を麻痺させるための
そのためなら…
僕はもう手段を
選べないくらいに