失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
そして少し彼は口調を変えた
「まあ…公共の秩序に貢献したと言
える…あの女を殺したことは」
…母親が
殺されていた…?
「だが新たな火種をばらまいた元凶
でもある…あんたが元凶のひとつを
作ったのはまぎれもない事実だ」
彼は男性を冷淡に見つめながら
そのことを言い放った
彼の母親は殺されていた
彼が冷淡なぶん
僕の胸が鈍器で殴られたみたいな
窒息しそうな感触がした
だが殺されたことを貢献と言い
産みの親を"あの女"と呼ぶ
彼の母親に対する気持ちが
僕には想像出来なかった
憎しみと…侮蔑…?
悲しみさえ感じないほどの…?
愛のない母親
彼女の道具だった…
いったい彼は
母親からどんな仕打ちを
受けたんだろうか