失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



彼の消息

ずっと忘れていたのに

辛さがまた一気に加速してくる



僕には

どうすることも出来ない

生死もわからなくて

ただ

祈って

祈り続けた




僕の愛する人は

消息も

生死すら

わからないんだ

僕が愛したたった二人が



そ…んな…のっ…て

あるの…か…よ…






誰にも言えない秘密に

喉を絞められてる

興信所に伝えるべき

重大な情報なのに

これを言えない

こんなことがもし親にばれたら

兄はたとえ見つかっても

帰ってこれないかもしれない

僕も家を出なければならない

それ以上に両親が

耐えられないだろう




理解されることはない

絶対的な孤独の感覚



周りの人が僕を誰も理解しない

いや…しちゃいけない

されてはならない

だから僕ひとりで立ち向かわなきゃ

ならない

止まっていられる理由はない

父に理解されない…?

理解されたら終わりだ

ずっとそうだったじゃないか

動けない兄をタクシーで

連れて帰った日からずっと


いや…その前からずっと







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