失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
理解されてはならない
知られてはならない
その中で僕はずっと戦ってきた
僕にはいつも限界があった
自分の能力…心の限界
今回の限界の壁は絶望的だ
ではあの時は絶望的では
なかったのか?
兄が血まみれでベッドで
震えていたあの日
二人して悪魔に鎖でつながれて
絶望の闇をさまよっていた日々も
僕はハッとした
そうだ
毎回同じようにギリギリの限界で
同じように絶望的だったはずだ
こんなとき
僕はどんな風に
事態を収束したのだろうか
奇跡みたいな事態の変化
突発的な予想外の展開
それらすべてを
祈って
いた
僕はその時
思わず息を飲んだ
(祈って…な…い…)
なぜだ…?
僕はいったい
今まで何をしてたんだろう?
雷に打たれたように
唐突に全ての記憶が回帰する
そのことにショックをうけた
あのことを僕は
記憶から消し去ろうとしていた
ほんとに…無意識に
自分が怖くなった
まだたったの3年じゃないか?
兄貴…!
ごめん
僕は
大事なことを
大事なことを…
まだ…間に合うだろうか
まだ