失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
「…やっぱ…り…」
僕は震える唇で呟いていた
兄は処分してはいなかったのか
母の感じた違和感は
本当だった
兄は捨てられなかったのだ
隠していた
僕に見つからないように
再び心が凍りつくような寒気が
僕を襲った
「でも…ファイルは…なかったんで
す…そのような類いのものも…メモ
リーも…なくて…」
「それらがなかったのは…お兄さん
の父親が…もしくはお兄さん自身が
メディアにではなくオンライン上に
ファイルの情報を隠したからだ」
オンライン…?
「それって…ネット上…?」
「そう…ネット上の保管庫にね…ID
とパスワードがなければアクセスは
出来ない…考えられるのは君のお兄
さんはファイルをもらったのではな
くIDとパスワードをもらったという
可能性がある」