失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「その…とおりだ…よ…愛すること

も…善か…悪か…もうわからない」



僕はほとんど独り言みたいに

言葉を絞り出していた



「兄貴を…僕は…愛することで追い

詰めた…のかな……記憶を失った兄

貴が…幸せに見えた…それは…僕が

兄貴の罪悪感を…僕の存在が…僕が

愛することが兄貴を苦しめてたって

どっかで…知ってたから……神父が

…罪…だって…言ったことを…僕は

絶対に認めない…でも…兄貴は抜け

られないんだ…自分の罪を…兄貴は

許さない…んだ…僕が愛すれば愛す

るほど…兄貴は自分…許さない…兄

弟だから…男同士…だから…そんな

こと…罪だなんて…僕は認めない…

でも…それが…兄貴を知らないうち

に…追い詰めた…兄貴は僕とは背負

っているものが違ってたんだ…僕は

…それを理解したくなかった…理解

したく…なかったんだ…そして…本

当に…理解出来なかったんだ…」




そう

理解出来なかったんだ

兄貴が苦しんでいる理由を

僕は理解したくなかったそれ以上に

理解出来なかったんだ



この写真の笑顔を見るまで



その罪悪感が

どれだけ深かったかを…





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