失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
その罪悪感は
僕が愛すれば
溶けると思ってた
でも違っていた
僕がいたから兄は苦しんだ
僕が記憶か消え去ったとき
兄に本当の平和が訪れた
それを見た僕は
なにかを覗かされた
僕が超えられなかったなにかを
どんなに愛しても
そして愛されても
引き抜くことの出来ない
十字架に打ち付けられた
手の平の釘みたいに…
「確かに理解していないな…君は」
そう言いながら
彼が僕をスッと抱き寄せた
あまりに軽くあまりに唐突に
彼の胸の中に入ってしまった僕は
そのまま彼の身体に身を任せた
抗う気力もなく
この世に居ることの理由すら
無くて
「バカ…なんだよ…あなたが言う通
り…何もわかってなかった…」
「違うよ…」
彼は子どもをあやすように言った
「君の兄さんの本当の罪はね…私が
君に犯した罪と一緒なんだよ…同性
だから?兄弟だから?…違うんだ」