失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
彼は唐突に愛撫をやめ
僕をきつく抱きしめた
「君を自由にしたい…私から…」
同じ…だ…
あの時と同じ…
兄が僕を…自由に…
そしてあのあと…兄は…!
「だから?…だからなの?…だから
あなたはお父さんと…この取り引き
をしたの?…日本から…出ていくっ
て…そういうことなの?」
兄は僕から…去ろうと…
「君にしては珍しく察しが良い…そ
うか…君の兄さんからも同じことを
言われたことがあるのか…」
なぜ…わかるの…
それがわかるの?
やっぱり…同じ…だから…?
僕にはわからないそれが
彼には…わかって
「わかったか?…私と違って君の兄
さんは確信犯じゃない…君の言うと
おり…父親を真似した…それだけだ
…だからそれがどういう意味を持つ
のかが成長するにつれて理解されて
くる…頭の良い君の兄さんのことだ
…早いうちに私の陥った呪縛を自覚
したはずだ…そして自分のしたこと
を責め苛む…君のために…また自分
のためにな…そして…それに耐えら
れなくなった時に…」
彼は抱きしめていた僕の身体を
突然フッと離した