失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「メシの時間だ…」

いつの間にか彼が戸口に立っていた

「……」

そのまま僕が押し黙っていると

彼は僕の後ろに立った

「トーストもコーヒーも冷めるぞ…

泣きながらでも食え…薬の時間だ」

そう言うと彼は僕の腰を抱え

無理矢理食卓まで引きずっていった



食卓の椅子に座らされ

リビングに落ちているTシャツを

彼が人形みたいに僕に着せる

「私が作った朝飯を食べないなど考

えられんぞ…泣こうがわめこうが食

うんだ」

「…わ…かった…よ」

かすれた声で答えて彼を見た

口をへの字に曲げてにらんでいる

少し…可笑しい

「いただき…ます」

「しつけが良いな」

コーヒーを飲む

インスタントだな

「それはクソ不味いな…レギュラー

もないなんて最悪だ…ティーバッグ

が無いのがもっと腹がたつ」

そう言うと僕にポーションをくれた

「牛乳もない…これでごまかせ」

「ありがとう…文句ばっかりだね」

「生活のスタイルが変わるのは耐え

難いものがある」

この人ならこだわりは沢山ありそう

泣くのを少し忘れた





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