失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「おぉ…久しぶりじゃないか!

パンク少年!」



突然のその声に僕は驚いて

飛び上がりそうになった

声のする方に目をこらす

奥のドアから僕に手を振る人が

…不良神父だ

「す…すいません…勝手に入り

ました」

「良いんだよ!言っただろ?」

「あ…はい…そうです」

神父はこちらに歩いて来た

「だから来たんだろ?」

「ええ…はい」

「そういう場所だ…そうじゃな

ければ意味がないからな」


3年前とあまり変わりない

不良神父の雰囲気に

僕は少し楽になった



「ずいぶん大人になったなあ…

痩せて…顔色が良くない…具合

でも悪いのかな?」

「…え…あ」

僕は神父から目を反らした


神父は近づくと僕の隣に立った

「なんにもなくて此処に来る人

はあまりいない」

神父は僕の心を見透かしたよう

に話した

「何かあれば聞くよ…他の人に

は秘密だから安心して相談すれ

ばいい」

不良神父はそう言うと

にっこり笑った



「あの…」

僕は床を見詰めたまま尋ねた

「…懺悔…って…できますか?

あの…僕みたいに…信者じゃな

くても?」






 
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