失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
クスリだ
思わず息を詰めた
ひとりでに顔が歪んだんだろう
頭の傷に痛みが走った
「うう…イヤだ…これ…禁断症状…
似てる」
「そうか…それは嫌だろうな…嫌な
ら叫べばいい…不安なら泣けばいい
…だがな…気持ち悪さから逃げるな
…さっきみたいに錯乱してもかまわ
ない…どうしても耐えられないなら
また固く締めて守ればいい…だが…
それで終わらせるな…いいか?」
「うぅ…」
彼の言葉にうめいた
愛撫の快感と記憶の不快さが
交互にやってくる
ただ腹部の力を抜くだけのことが
こんなに抵抗感のあることなのかと
自分の身体をもどかしく感じた
自分の身体なのに自分の自由にすら
ならないなんて…
でも僕は生まれてからずっと
こうやって兄との秘密に耐えてきた
バレたら死が待っていた
それを今日ここですぐには
解放できそうにはなかった