失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「無理…だよ…いますぐには…」

途方にくれて僕は彼に言った

「そうか…まだ早いか…」

彼は意外なほどすぐにその抵抗感を

わかってくれたようだった

無理はさせないように

僕を待ってくれてる

僕は少し安心した

でも…少しずつなら…

できる…かも

「…ごめん…僕は…小さいころから

…多分…声出さないように我慢して

た…バレたら死ななきゃならないっ

て…兄貴に言われて…だから…すぐ

は…無理なんだ…すぐは無理だけど

…これから少しずつなら…できると

思う…」

彼はうなづいた

「それでいい…君のトラウマは生ま

れつきだ…それを認めるだけでも時

間が要る…焦ることはない…だが私

以外にこんな話をできるセラピスト

を将来予定していないなら…私と離

れる前に君は君自身を支えられるよ

うになるべきだ…違うか?」



見たくない現実が語られた

僕は口走っていた

「離れられないよ…なぜ…さらって

行ってくれないの?」

彼はゆっくりと口を開いた

「今の君をさらっても…また繰り返

すだけだ…嫉妬…疑心暗鬼…妄想…

私が…耐えられないんだ…私が…」

そう言うと彼は苦しそうに

僕をかき抱いた





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