失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
ぜんぶ片付けて
要るものは要る人で分けて
あとはぜんぶ捨てて下さい
その借りてたという部屋も
大変申し訳ないですが
自分ではできないので解約して
整理して下さいませんか?
母が兄からそう言われたと聞いた
兄の預金通帳に入ってた給料も
払った部屋の家賃に当てて欲しいと
そんなものがあったんですか
私は要りませんので
でも…
カードとか印鑑とかありますか?
私はもう暗証番号は忘れてますし
本人じゃなくてもおろせますか?
「なんかその話ししてたら…悲しい
のに可笑しくて…お兄ちゃんが細か
いことまで心配しててね」
部屋を二人で片付けながら
そんなことを話した
「僕…兄貴のカードの暗証番号知っ
てるよ…もしもの時にって兄貴が教
えてくれたんだけど」
「あぁそうなの? 助かったわ…信
用あったのねぇ」
信用だけはね
結局一度も使わなかったけど
捜索の時にいろいろ物色したせいで
そういう大事なものは
ほぼ確保して整理していた
そんなことが今になって
こんな風に役に立ってて
変な感じだった