失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】
ガランとした部屋に立ち
もうここでの物語が終わることを
切なさの中で感じていた
終わって…いいんだ
自分にそんな許可が下りたようで
空虚感の中で
その思いが支えだった
「さて…あとはお父さんに任せよう
ね…お腹空いたね…お昼コンビニの
サンドイッチだけだったし…」
母の声で我に返った
思いのほか母は持ちこたえている
それは僕も同じだった
その理由を共有できるのは
母以外にはいなかった
たぶん父はもう少し
複雑な気持ちなんだろうな
親父とも少し話したい
そんな気になった自分が
意外だった
「近くにファミレスあるよ」
「そこにしようか…お父さん今日は
食べてきてくれるって言ってくれた
しね…たまにはステーキでも食べよ
っか?」
「ステーキって…胃のほうは大丈夫
なの?」
「うーん…カレーよりは大丈夫でし
ょ…あなた食べなさいよ…母さんは
一口もらうから」
「僕のメニュー決定権は無し?」
「あっ…そっか」
兄と行ったファミレスも
これで最後だな
そのことは母には言わなかった