失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】





「どんなに楽だろうかって…思うよ

…この気持ちが薄れて褪せてしまっ

ていくならね…でもそれはただの希

望的観測だった…あなたがそこにい

る…それだけで…もう…」

「それだけで…?」

「うん…でもあなたには重いよね…

僕の気持ちは…飛び立つあなたには

重すぎるよね」



兄…いやもう“あなた”としか

呼びようの無い彼は

僕の言葉に黙ったままだった



「これ以上…言わせないでよ…僕も

…恥ずかしいから…すごく」

記憶のない兄を前にした

まるでストーカーの妄想みたいな

僕の告白

自分で聞いても…引く

兄…いや彼にとっては

重荷どころか迷惑かも知れない

僕を傷つけるから断れない?

優しいから会ってくれてる?



でもそうならば僕も迷惑だ

とても悲しいけど

そんな配慮はもうして欲しくない



「気を遣ってる?僕に…」

「……」

「そうだよね…そんなこと言えない

よね…優しいから…そこは全然変わ

らないね…記憶が無くなっても」

僕は精一杯明るい声でそう言った







< 451 / 514 >

この作品をシェア

pagetop