ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
「インスタントだけどな」


そう言ってニッと笑う水嶋に私はなんとか笑顔を返してみた。


――彼だったらインスタントコーヒーなんてありえないだろうな。


もう別れた彼と水嶋を比べても仕方ないのに。

どっちも私のものじゃないのに。


「インスタントも好きだよ」


ツンと鼻を刺激する香りに私は素直な気持ちで答えた。


コーヒーはインスタントが好き。

コース料理よりもラーメン屋さんが好き。


こんな私、やっぱり無理してたのかなあって今になって思う。

セレブな婚約に憧れて、それを手に入れたいって気持ちばっかりが先行してたのかも。
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