ラッキービーンズ~ドン底から始まる恋~
タクシーを呼ぼうとバッグから携帯を取り出した。

メモリしてあるタクシー会社の番号を表示する。


「……」


パタン。

呼び出しボタンに手をかけたものの、携帯を閉じてしまった。


だってさ。

今からあの暗くてひとりぼっちのアパートに帰って、メイクも落とさずに死んだように眠る自分を容易に想像できて。

そんで目覚めた後にはひどい頭痛で飲みすぎたって後悔して。


頭痛薬を飲みながら、仕事もないし、いつまで生活できるんだろーって財布の中身とにらめっこするんだよ?


ヤバい。

絵に描いたような不幸な女じゃん、私。


あぁー、エリート銀行マンと婚約できたからって、さっさと寿退社なんかするんじゃなかったー!

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