ラッキービーンズ～ドン底から始まる恋～

さっき飲み会にいた人がいたら気まずいなと思ったけれど、タクシー乗り場に知った顔は並んでいなかった。

ホッと息をついて列の最後尾につく。


手持ち無沙汰だから意味もなく携帯を開いていた。


目の前には中年のおじさん二人組。

酔っているのが丸わかりで、相当お酒臭い。


おじさんも明日仕事でしょー。

そんなに飲んだら明日に響きますよ？


携帯画面を見ながら心の中でそんな余計なお世話をつぶやく。


そうしたらまるで聞こえたかのように、おじさんの一人がよろけて私へとぶつかってきた。


「おっ、ごめんごめん」

「いえ……」


関わりたくないから小さな声で会釈して顔を見ないようにする。

それなのに酔って気が大きくなったおじさんはそのまま私に話しかけてきた。