一期一会
フタをしたそれを大きめのハンカチで包んでかばんに入れると、残りのおかずで朝食にした。
「いただきます」
そう言って彼女は手を合わせ、箸でウィンナーを取る。
「犬さんウィンナー……可愛い」
犬の顔を模したこの"わんわんお"(※正式名称はない)と呼ばれるキャラクターはシェイン族のみならず、人間族の子供達の間でも人気になっており、木を彫って出来たおもちゃなどでよく遊んでいる。
朝食を終え、食後のお茶を飲んだあとに彼女は日課である、クリスタル細工の仕事に取りかかった。シェイン族は服飾や宝飾品、工芸品等を作り、生計をたてている。その芸術性、完成度は非常に高く、愛好家は多い。
「ふう……」
と、イェオーシュアが小さなため息をして作業用のメガネをはずすと、最後の仕上げを終えたクリスタルのわんわんおをそっと完成品の台に置いた。
両手を上に伸ばして背伸びをすると、背中にパキパキと音が鳴るのが聞こえてくる。そうしてふと時計を見ると、もう十一時を回っていた。
「いけない、もうそろそろいかないと」
言って彼女は深緑色の外套を羽織り、マフラーを首に巻きつつかばんを手に持ち玄関を出た。