一期一会
外は快晴に恵まれ、そこここで小鳥達が歌っている。木々の隙間から光条が幾重にも辺りを射していて美しい。
霜柱を踏む音を足に感じながら歩き進むと、これから向かう行き先から、コォーン……、コォーン……、と不規則に木を打つ音が聞こえてくる。
不審に思った彼女はそろそろと歩みを遅め、なるべく足音を小さくして身を屈めながら進んでいく。花を摘みに向かうその場所に近づくにつ先の音は大きくなってくる。そうして目的の場所に着いて、茂みからこっそりと顔を出して様子を窺ってみる。
彼女の視線の先には集落を作る際、木々を伐採したために出来た空地が広がっている。主に採集した薪(まき)を一つ箇所に纏めておいたり、集落の集会や祭りなどに使われている。その広場の中央に一人の男が立っていた。
男の格好はというと、白のワイシャツに褐色のズボンを履き、首に巻いた赤のマフラーを風に靡(なび)かせ、栗色の髪と犬耳は陽光に照らされて、金色に輝いている。
脳中にて彼女は集落の住民達と男を照らし合わせてみた。そうして自身の犬耳を右手でつまんでいる。深く考え込む時にする癖だ。