一期一会
そんな彼女の様子を男は固唾を飲んで見守っている。さっきまで女神だったのが、今では北欧神話に登場する戦乙女のようだと思っている。
弓を構え、弦を引き絞る。キリキリと音を鳴らして弓はしなる。そうして蓄積された力を矢に与え、それを解放する。
ひゃう……、ふつ。と矢は的の真ん中に命中する。続けざまに二矢、三矢と放たれ、在るべき所に帰るように先程と同様に命中した。
それを見て男は感激し、思わず歓声をあげて戦乙女に惜しみない拍手をした。そのせいで彼女は照れくさそうに小さくおじぎをした。
彼女は改めて男の姿に目を見やった。身長は少し高いくらいだろうか。蒼顔にして目は細く、端正な顔つきをしている。体の線は細く、肌は白い。節くれの無い綺麗な手はまだ狩りをしてないのだと彼女は認めた。
その視線を意識しているのか、男が頬を紅く染めている。少年にしては少し大人びて見える。かといって大人というにはまだ幼い。
先ほどのはしゃぎぶりを思い出し、彼女は納得しつつうなずいていた。ふと男は咳払いを一つして、それから自己紹介をした。