空を翔ける一筋の流れ星
「何で起こさなかったんだよ」


「いや、翔さんが観ていたDVDを私も夢中になって観ていたら寝坊してしまって」


「寝坊すんなよ。

というか、幽霊って寝るのか。

夜に活動するものじゃないのかよ」


「そこらへんは・・・

まだ、幽霊として駆け出しですから分からないです」


「もうでもいいや。

どうでもいいから、こういうときは叩き起こしてくれよ」


「どうでもいいって・・・

というか、幽霊だから翔さんに触れませんけど・・・」


「ああ、もう空のせいで遅刻だよ」


「な、な、何で私のせいになるんですか」


寝坊はするし、空とは言い合いになるしで散々な朝だ。

今のやり取りで空はどうやら機嫌を悪くしたらしい。

まあ、今のやり取りだったら誰であろうが、俺の相手をしていたら機嫌を悪くするだろうな。



着替えを済ませて玄関を開けると、熱気がもろに体に襲い掛かってきて一気に急いでいる気持ちが萎えてしまった。

玄関を出てアパートの周りを見渡すと、景色全体に陽炎がかかっているように見えて走ろうという気さえ起きない。

この暑さのなかで駅まで走ったら自殺行為だな・・・


「翔さん。

急がないと授業に間に合いませんよ」


俺の変わりに急いでいる空を見て、幽霊は暑さを感じないものなんだなとついつい羨ましく思ってしまった。
< 26 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop