空を翔ける一筋の流れ星
「辛いこと、悲しいこと、切ないことなんかがあると、いつもここに来てるんだ」


いつもは一人で来ているから何も喋らない。



しかし、今日は俺だけじゃない。



初めて俺以外の人にここを教え、今一緒に目の前に広がる夜景を眺めている。


「こういう場所もあっていいだろ」


何も言わない変わりに深く頷いた表情は優しく微笑んでいて、その表情があまりにも俺の胸を掴もうとするので照れ笑いをして誤魔化した。


「私、生きているときに翔さんに会いたかったです。

こんなに優しいお兄ちゃんがいればなあ」


(兄妹としてか)


生きているときに会いたかったと言われて一瞬胸の鼓動が強くなったが、それが兄妹としてということに嬉しい気持ちと少し残念な気持ちが入り交じる。



残念?



空と出会ってまだ二週間くらいしか経っていないし、空は幽霊なのに何を残念と思っているんだ。


「あれ?

そういえば、今日って辛いこととかって特に無かったように思うんですけど」


その言葉に慌てて視線を夜景のほうに逸らすと、空が不思議そうな顔でこちらを覗き込んできた。

その動作に慌ててまた視線を逸らすと、もう一度同じように覗き込んできた。


「空、顔が近いよ。

今日来たのは、お前の壁壊すために来たんだよ」


「そうなんですか」


「そうだよ。

折角、綺麗な夜景なんだから静かに見ろよ」


わざとらしい気もしたが、それでも空は納得したようにもう一度夜景を堪能しだした。



どこまでも明かりが続いているように見えても、夜空との境目ははっきりとしている。

この境目のようにはっきりとしていたら、この夜景を見ることもないのだろうか・・・
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