十†字†路
20年前、父は母に出会った。
子供(つまり私)が出来てからは多少落ち着いたが、当時の母はホントにホントにズレていた。

のほほ~んとしていて、
掴み所がなく、
危険に首を突っ込み、
フラフラ~と迷子になる。

溺れた子供を助けに行く、そして自分も溺れる、しかも足のつく浅瀬で。

そんな人だったよ、と言っていた。

母は母で、父の事を不審者と思っていたらしい。

いや、思うなら近付くなよ。

というか結婚するなよ…

「父さんったら真顔で『一生かけて君を守る』とか言うのよ?しかも出会って間もない頃に。そこで私は、不審者なんだな~って思ったの」
「いやいや、思ったのならなんで結婚したのよ!?」
「ん~?いや~、あまりにも熱心だったから、悪くない変質者さんなんだな~、って思って」
「変質者に悪いも悪くないも無いでしょう…」

母の言動を聞いていると、頭がとろけそうになる…

確かに父が守らなかったらどうなってたところだか…

いや、どうなっても母は母っぽい。

犯罪者に人質にされたのなら、一緒に犯罪するだろう。
誘拐されたら、誘拐犯と一緒に暮らすだろう。

そんな無垢で純粋でバカな母親だった。

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