夢の続きで逢えたら
第五章

蜃気楼


翌朝、僕は休む間もなく、

母さんの実家がある北海道へ飛んだ。



本当は、父さんと母さんだけが行く予定だったが、

東京に居残ってもすることはないし、

昨夜のことからも、

あんなに好きな詩野の歌でさえ聴く気分にはなれず、

僕もついていくことにした。



「ねぇ母さん。耳硬化症って知ってる?」


窓の外に果てしなく広がる雲海を眺めながら、

僕が尋ねた。


「ジコウカショウ?」

「耳の病気だよ」

「医者じゃないからわからないわ」



母さんまで同じことを…。


まぁ当然僕も、

母さんが知らないことくらい予想していた。


だからこそ聞いたのかもしれない。


ものすごく恐ろしい病気の可能性がないこともない。


そう考えると、

医学の本を読んで調べたり、医者に詳しく聞いたりするのは正直怖かった…




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