夢の続きで逢えたら

今見ているこのツリーの、

何十分の一のサイズのミニツリーが売っていて、

僕はそれがどうしても欲しくて頼んだのだが、

母さんは、

『我慢しなさい』

と言って、許してくれなかった。


その時は、

『学校の教室が寂しいから、コレを持って行って飾りたい』

と、幼いながら見事な嘘をついていたが、

本当は、当時好きだった女の子にプレゼントするためだった。


そんなことを思い出し、

「大分ませたガキだな」

そう鼻で笑い、コーヒーを一口。



結局、そのミニツリーを手に入れることはできず、

想いも伝えられないまま、三年生の春、

その子は福岡の学校へ転校してしまった。


覚えているのは“佐伯”という苗字だけ。





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