夢の続きで逢えたら

「そう言えば、今日はクリスマスか」


彼女でもいたら怒られそうな台詞だ。


それだけオーディションに夢中だった。


僕は、一歩二歩、ゆっくりとその大きなクリスマスツリーに近づいた。


持っていた残り少ないお金で缶コーヒーを買い、

入口脇にある赤いベンチに腰掛け、

しばらくその七色に輝くツリーに見とれていた。



時間の経過と共に、

その景色にどこか懐かしさを感じる。



そうか…あの時。


僕はこのクリスマスツリーを見るのは初めてではなかった……





確かあれは―――…


小学校に入学して、新しい環境にも慣れてきたちょうどこの時期。


僕はこのデパートで、

母さんの服を引っ張り、ダダをこねて泣き叫んでいた。





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