その手で溶かして
冷静に考えれば、ウミもここでバイトをしているから、ここにいる。



ただ、それだけのことだけど……



私にとっては、それだけのことではすまない。



「新しく入ったのってユキ?」



ウミもこの偶然を受け止めきれていないのだろう。



声は出ているものの、体は硬直しているかのように動いていない。



「取り敢えず、店に出ないと。準備が出来たら、店のほうに。」



「えぇ。」



やっと、振り絞って出した声は少し裏返ってしまう。


どうして?



どうして?



と頭の中は混乱しているのに、“ユキ”と呼んでくれたウミにホッとしている気持ちのほうが強かった気がする。
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