゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚ 夜の端 。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。


 夏の光に縁どられ

た、あたしと同じ年

の、男の子。

彼は空を泳ぐ魚のよ

うに、美しい姿勢で

舞っていた。陽光に

すける赤いしぶき

は、ザクロのように

澄んだ味のルビーに

なってしまうんじゃ

ないかしら。

もしかしたら、彼は

妖精なのじゃないか

しら。

ふと、

そんなことを思いつ

く。

あの子は

羽をもがれた

妖精なのだ。

これは彼の最後の飛

翔で、もう自由に空

で遊ぶことはできな

いのだ。

耳をつく、自転車の

落下音。

やっと我に帰る。

トラックは、ひどく

震えながら走り去っ

ていく。少年も地面

にすい寄せられてい

く。あたしはとっさ

に彼の下にすべりこ

み、心もとないクッ

ションになった。



< 169 / 406 >

この作品をシェア

pagetop