゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚ 夜の端 。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。゚。


 あたしはその日、

歩いていた。いつも

のように歩いていた



夏の陽射しに

照らされて――。

りんごのように赤い

顔、マニキュアをぬ

った小さな爪、赤い

口紅をひいたうすべ

ったい唇。

涼しげな水色のアイ

シャドウ、のんびり

した水玉模様のワン

ピース。

 汗ばんだ肌と布の

間をぬるい風が通っ

てきもちいい。

 あたしは誰とも会

わない予定だった。

猫もいない

道路を、ひとりぼ

っちで弾むように歩

いていく。サイズの

あわないハイヒール

の音が、耳に心地よ

い。

かつーん、

かつーん、

かつーん。

入道雲はもくもくふ

くらんで。

アスファルトはカチ

カチに熱されて。

ふぅっと一息。



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