つむじ風。

「亮二、兄さんに…
ううん、伯父さんに逆らうのはやめてちょうだい」

おふくろが濡れたタオルを俺の額に押し当てながら、涙ながらにそう言った。

「別にタテついてるわけじゃねぇよ」
そう言いたかったが、やめた。

「無理を言って、ここに置いてもらってるんだから…」

「…ああ、わかってるよ」
ただそう答えた。

次の日も次の日も
あいつは味をしめたかのように
何かしら理由をつけては俺を殴り、蹴った。

耐えた。
ただひたすら俺は耐えた。

こんなやつ、俺がその気になれば一発だ。

だけど、そうしなかった。
おふくろと兄貴のために。

何日も俺は耐え続けた。


その日は、秋にしては冷え込みが強い夜だった。

おふくろがよく咳をしていたから、
伯母さんに毛布を一枚余分に貸してもらえないか訊ねに行った。

「ないよ」

「何でもいいんです。何か…」

「ないって言ってるでしょ!
しつこいわね、あんた!」

その声を聞きつけて、あいつが顔を出した。

「何をもめてるんだ!」

「毛布を借りたかっただけです」

「あ?毛布?」

「…はい」

「贅沢言ってんじゃねぇぞ!」

「でもおふくろ…いえ
母の咳がひどいので…」

「おまえのふとんをかけてやればいいだろ」

「……」

「なんだ、文句あんのか?」

「いえ…じゃあそうします」

俺が部屋に戻ろうとした時だった。




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