つむじ風。
夕方までそこで時間を潰して家に戻った。
いつもと変わらず、
あいつは酒を飲んでいた。
「…ただいま帰りました」
低い声でそう言うと、
目を合わせないように部屋へ向かう。
「待てよ」
その声に、思わず舌打ちした。
なんだよ?
今日は何が気に入らねぇんだよ。
「おい、おまえ今、舌打ちしたろ?
なぁ!したよな?え!?」
あいつは俺の胸ぐらをつかんで
臭い息を吹きかける。
俺は絶対に目をそらさなかった。
「あ?なんだ、その目は!?」
いつも通りだ。
親父に似た俺が気に入らないんだ、
この男は。
あいつは俺をそのまま壁にぶち当てた。
頭を強く打つ。
「何か言えよ、こら!」
何度も何度も頭を壁に打ち付けられた。
やれよ、気の済むまで。
俺が憎いんだろ?
死ぬまでやれよ!
ドンッ!ドンッ!
その音におふくろが血相を変えて出てくる。
「兄さんっ!やめて!」
なぁ博子。
こんな時でも、おまえのことを考える。
今の俺を見たら、おまえはどう思う?
おまえとはぐれたばっかりに
このザマだ。
博子…
おまえの
その柔らかくて
よく通る声が聞きたい。
このまま聞かねぇと…
俺、忘れてしまいそうだ…