つむじ風。
「どうだった?」
昼休み。
仕事場でツヨシさんが俺の隣に腰掛けた。
「別に…」
「別に?」
煙草に火をつける手をとめて、俺を見る。
「なんかほら、もっとこう…あるだろ?よかった、とかさ」
「…こんなもんかってくらいです」
正直な感想だった。
巷で聞くような、
そんないいものだとは思えなかった。
彼は口笛をピューと一度だけ鳴らすと、
ようやく煙草に火をつけた。
日の当たる場所はまるで春のように暖かい。
俺は無言でコンビニ弁当をかきこんだ。
「亮二さぁ、おまえ」
灰を落としながら、ツヨシさんは言う。
「好きな女、いるだろ」
「…いません」
「…そっか」
んなわけねぇだろ、という彼の言葉が聞こえてきそうだった。
「聞いた話だけどさ、
男には2種類あるんだってよ。
どんな女でも抱けるやつと、
惚れた女しか抱けないやつ、の2通り」
「……」
「おまえは…どっちなんだろうな」
そう言って笑うと、
まだ吸い始めたばかりの煙草を空き缶に入れた。
「ま、俺は限りなく前者に近いな。
でも、気持ちは後者でありたいと思ってる」
俺はふっと笑った。
「男って勝手だろ?
でもさ、考えようによっては、
後者の場合でも
いろんな女に惚れたら、
いろんな女が抱けるってわけだよ」
俺は頷くしかなかった。