つむじ風。
そんな俺の心の動きに、
兄貴分の林さんは気付いたのだろう。
直人を通じて、早く事を進めるようにと言ってきた。
直人自身も、俺に何か言いたげな素振りを見せる。
「心配するな、あのタイプの女はヤクザに免疫がない。
なかなかなびかねぇんだよ」
そうは言ったものの、
グズグズしている暇はない、そう思った。
俺は昼間の街を歩きながら、考え事をしていた。
次に会う時が、最後の時となる。
博子、おまえには俺のことを完全に忘れてもらう必要がある。
変に情を残すと、おまえのことだ、
また俺に会いに来るかもしれない。
傷付けることになるが、
とことん最低の男に徹するしかない。
そして林さん…
あの人を納得させるような方法。
…これしか思い付かない。
「失敗に終わった」と。
下手な言い訳は、あの人には通用しない。
指を落とす覚悟はできている。
それで博子をこの罠から逃がすことができるのなら、何本指を失ってもいい。