To.カノンを奏でる君
第3楽章≫レンズの向こう、トロイメライ。





 十二月もこの頃、本格的な寒さを感じさせるようになった。

 より一層、校内も教室もクリスマスで盛り上がり、赤と緑のクリスマスカラーがやたら目立つ。

 そして、カップル成立が日頃の倍に増え、デートの話で盛り上がっている。


 どうしてこうもクリスマスは恋人同士で過ごす日になってしまったのか。花音は溜め息を吐く。


「ノンノン?」


 今日は緩く左右に髪を結わえている直樹が花音の顔を覗き込む。

 相変わらず、男子らしくない男子だ。


「やー。クリスマス目前ですからね」

「あぁ」


 と呟きながら、直樹は「いる?」とのど飴を差し出す。

 花音が首を振ると、直樹はあっさりのど飴を引っ込めた。


「ノンノンは今年のクリスマスどうするの?」

「イヴは祥ちゃんの所でパーティ、クリスマスは家族でかなぁ」

「去年と一緒じゃん」

「だね」


 毎年、そうやって来た。

 イヴは三人でパーティ。そしてクリスマスは、それぞれ家で家族団欒。

 いつからかそうなっていた。


「何よ。タータンと進展はないわけ?」

「ないよ。私は祥ちゃんとは付き合えないの」

「え?」

「約束したの。お互いを好きにならないって」

「いつ……」

「永くは生きられないって聞かされた日」
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