To.カノンを奏でる君
最終楽章≫永遠の幸せ。





「寂しくなるわね」


 三月末、駅前で別れを惜しみ合う五人。

 直樹、美香子、祥多は旅立つ花音と早河を見送る。


「電車で二時間なんだから、会おうと思えば会えるよ」


 にっこりと花音は笑う。


「そうだけどぉ…」

「今更何よ。県外に行ってた人が」

「うっ」


 美香子に突っ込まれた直樹は、正論を前に押し黙る。


「花音ちゃん。これ、私と直樹君から。餞別代わりに」


 美香子は花音に紙袋を渡す。礼を言いながら中を見ると、いろんな種類の紅茶が入っていた。それから、ティーカップ。


「わー! 紅茶セットだ!」

「それぞれの気分に合わせて飲んでね」

「うん! ありがとう、美香子ちゃん、直ちゃん」


 嬉しそうに笑う花音に、美香子は微笑み、早河の方を向く。


「早河君には、これ」


 美香子が差し出したのは、小さな紙袋。早河は驚きながらもそれを受け取る。


「いいんですか、俺まで」

「マグカップだから、大した事ない代物だけど」

「いやいや! ありがとうございます」


 ぺこりと頭を下げ、まだ嬉しそうな花音の隣で笑った。

 直樹はそんな二人を可愛いなと眺めながら、見送りに来ても一切しゃべらない祥多を見遣る。

 どこか不機嫌そうな表情をして向ける視線の先を追うと。


「あらあら」


 花音の隣に当たり前のようにいる早河に向けられていた。どうやら単なる嫉妬らしい。

 直樹は笑いながら祥多に言う。


「もうノンノンはタータンの彼女なんだから、そんな不安そうにしなくて大丈夫よ」


 祥多は直樹に目を向ける。
< 332 / 346 >

この作品をシェア

pagetop