To.カノンを奏でる君
「不安じゃない。何でお前も一緒に行くんだ、早河」


 キッと子どものように睨みつける祥多。


「何でって……同じ大学なんですけど」


 さらりと言ってのけた早河に、祥多の堪忍袋の緒が切れる。


「んな事言ってんじゃねぇ! 同じ大学はしゃーねぇけどな、わざわざ同日同刻に出発する必要はねぇだろっ!!」

「あらやだ。それくらいーじゃないの、タータン」

「良くねぇ! 大体、直! お前どっちの味方なんだ!」

「えー。じゃあ肩身の狭い早河君」


 直樹の言葉に、吹き出す花音と美香子。

 三年前を思い出す。よくこんな風に言い合いをしていた。


「あーそうかよ!」

「ええ、そうよ。誰かさんは献身的に尽くしたアタシの事忘れたしねー」

「あれは不可抗力だろ!」

「どうだかー」


 堪えきれなくなった花音と美香子は、人目もはばからず声を上げて笑った。早河は苦笑する。


「ったく。早河、花音に手ぇ出すんじゃねぇぞ」

「それ自信ないんでパスで」

「はぁ?!」

「けど、草薙が嫌がる事はしませんよ。ってか出来ないな」


 一瞬、表情が翳ったのを、祥多だけは見逃さなかった。それから急に真顔になる。


「信用するから、花音に何かあった時、助けてやってくれな。俺はすぐに飛んで行けねぇからさ」

「分かってますよ。けど、時枝さんは時枝さんなりのやり方で草薙を助けてやる事が出来ると思いますよ」

「愚痴聞いてやるくらいしかねぇけどな」


 草薙にとってそれが一番の助けですよ、と笑う早河。

 花音は自分を引き合いに出されての会話に、恥ずかしく思いながら苦笑い。
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