恋々綴り。【短編集】

#23



「あ」


 それは向こうが言った言葉だった。マスクとサングラスをした、なんだか怪しげな雰囲気。でも聞き覚えのある声だった。


 大型CDショップのインディーズ、デモ曲までも置いてあるところで選んであるときだった。


「雛ちゃんだよね」


 マスクとサングラスを外されて声を上げそうになった。いつもありがと、と目を細められた。


 ………私の大好きなバンドのギター……伸さん


 手に持ってるCDを見て、ふっと笑った。


「次、俺の前で見てね」



 営業上手な伸さん。
 最後に頭撫でるなんて、反則。




Fin
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