恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

「あのね、ゆめ」

 梨香は私の両手首を掴み、

 目の高さまで引っ張った。

「これが、あんたの理想なら」

 軽く振られた右手には携帯電話。

 画面には「Sひと」の表紙。

「こっちが現実」

 赤いアザがジンジン痛む。

 リアルドS彼氏のせいでできた傷はいつ治るだろうか。

「いい加減、学びなさい」

「学ぶって……」

「あたしたちは、結婚適齢期に差し掛かったのよ」

 25歳。

 確かに最近友人たちが次々に結婚していく。

「あんた、このままじゃ行き遅れるよ」

「どこに?」

「嫁に」

< 14 / 280 >

この作品をシェア

pagetop