恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~
「あのね、ゆめ」
梨香は私の両手首を掴み、
目の高さまで引っ張った。
「これが、あんたの理想なら」
軽く振られた右手には携帯電話。
画面には「Sひと」の表紙。
「こっちが現実」
赤いアザがジンジン痛む。
リアルドS彼氏のせいでできた傷はいつ治るだろうか。
「いい加減、学びなさい」
「学ぶって……」
「あたしたちは、結婚適齢期に差し掛かったのよ」
25歳。
確かに最近友人たちが次々に結婚していく。
「あんた、このままじゃ行き遅れるよ」
「どこに?」
「嫁に」