恋愛モラトリアム~夢見る乙女のオフィスラブ~

 私は大人しく一番端の席に座り、

 カウンターに立つ見慣れた男に声をかけた。

「いい加減やめたら? 梨香を使って稼ぐの」

 私の嫌味に苦笑いをしたこの店のマスター、

 橋本健吾は梨香の好きなカクテルを作っている。

「だからお前たちは俺のオゴリにしてるだろ」

 真っ黒な髪をオールバックにして、

 幼い顔はアゴヒゲでカバーする。

 健吾は私と梨香の腐れ縁的男友達なのだ。

 大学を中退してまで始めたこのバーは、

 いつもそこそこ賑わっている。

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