【企画】バトル、それは甘美なかほり【キャラバト】
気づけば、チェーンソーが首もとにあった。
大きく息を吸い、流れる冷や汗が床に落ちる前に、手にあったチェーンソーを手放した。
――助かった。
見れば蝶はいなくなり、今や正常な判断ができる。
なぞった汗を指先で触り、自分が今しがた行なった状況を察するに――あの蝶は、触ったものを強制的に負へと陥れる産物なのか。
感情を支配するとはおっかないにもほどがある。
では、なぜ。
なぜ、いきなり蝶が消えたかと言えば。
「……」
「……」
幽霊の涙は止まっていた。
硬直と言うべきか。
床の一点を見つめて、かちこちになっていた。