【企画】バトル、それは甘美なかほり【キャラバト】
「ああ……」
小さい頃を思い出す。
何度も読み返した楽しさの塊。だからきちんと頭に残っている。
人生の要なわけがないが、赤ずきんという物語はきちんと頭に残っていた。
忘れ去れない物語ながら、忘れさせる本の存在感。
「織部ー、そろそろ帰れって、うお!」
織部の様子を見に来たであろう担任が、倒れている本棚にぎょっとする。
「うわー、やっちまったな、織部。罰金一千万な。――ん、何持ってんだ、お前」
「先生、俺、これの感想文書きます」
小さな自分が読んだ忘れられない物語だからと、織部は絵本を大切に抱えていた。

