執事と共に賭け事を。
基本的にスローイングラインに立った人間には、声を掛けてはならない。

しかし、言葉以上にツバキの瞳は何かを春樹に語りかけていた。

春樹の狙いがぶれる。


「あの時と、同じ火照りを感じるわね」


テキーラによる心地よい火照りは、ツバキの狙いをより正確にした。


「ショット1杯じゃ足りなかったかしら。あの時は、目が回るほど呑んだものね」


ツバキはくすくすと笑った。


「貴方と付き合って、一番熱い夜だったわね」


春樹は、分解しきれないアルコールを感じながら再びダーツを構えた。

不安定な狙い。
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