執事と共に賭け事を。
「初めて、貴方が私の胸で眠った夜でもあったわね」


春樹は、目を閉じてその日を追憶した。


――まだ、春樹が20才になりたての頃だった。


大人になったという錯覚から独特の無鉄砲さを持っているときだ。

テキーラのショットを飲み続け、珍しく介抱が必要なほど酔ってしまった。

そして、その勢いのまま、ツバキと一晩を過ごした。

春樹は、ツバキの胸の中で感じた香水の匂いを忘れてはいない。


「この香水は、貴方をよくかき乱したわね」


かき上げるそのうなじから香るシャネルの5番――その香水に春樹は微かに眉を寄せた。
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