執事と共に賭け事を。
「やあ、春樹クン。待っていたよ」


そこには、ヒガキが居た。

春樹の眉間には、はっきりとしわが刻まれている。


「……お嬢様は、どこです」


深い声色。

しかし、臆した様子も無くヒガキはツバキの手からグラスを取り上げた。


「ソルティードック……グレープフルーツジュースとウォッカのカクテル。スノースタイルでおなじみのカクテルだ」

「それが?」

「この中身、実はこっそりすりかえられるはずだった。ただのグレープフルーツジュースにね」


ヒガキはにやりと口元だけで笑いながら、光沢のある黒い布が掛けられた的の前に立った。


「だけど彼女は、君の代わりにこのジュースを飲んだ。さ、君の探し物はここにある」


ヒガキは、まるで手品の種でも披露するかのようにさっと布を取り払い、恭しく一礼した。
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