執事と共に賭け事を。
「ダウト」


相手が、コールを掛ける。

それは、決して難しい宣言ではなかった。

Jという数字は4枚あるうち、3枚が破棄されているだろう、というのがわかっていた。

Jというカードは自分の手元にある限り、相手が宣言した場合それは嘘になる。

恵理夜は、ゆっくりとカードをめくった。


「スペードのJ《ジャック》です」


無いはずの、J――しかし、現実にそのJは目の前にある。

――終わらないゲームが、終わった。


「素晴らしい」


相手の、乾いた拍手が響く。


「僕の目の前で、完璧な勝利を見たのは初めてだ」
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