執事と共に賭け事を。
「で、あのJはどこから出てきたのかしら」


春樹は、少し言葉に詰まったような沈黙を見せる。


「春樹?」

「……実は、先ほどまで興じていたポーカーで、すり替えたカードでございます」


なるほど、確かに春樹の運が恵理夜に手渡されたのだ。


恵理夜は呆れた。


この執事は、ギャンブルにおいても優秀さを損なうことは無いようだ。

テーブルの中央に投げ出されたままのスペードのJ《ジャック》――黒い騎士が書かれたそのカードは、まるで春樹を象徴しているかのようだった。
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