執事と共に賭け事を。
「どうして、Jが足りない、とわかったの?」

「ヒガキ様が自らの意思でダウトコールを掛けるのは、J《ジャック》とA《エース》の時でした。つまり、そのどちらも破棄された数の方が多いと判断しました」

「自らの意思で、というと?」

「単純なことです。後ろに付いていた給仕が、恵理夜様の手札を記憶していたのですよ。それで、合図を送っていたのです」

「だから、貴方が私の後ろに付いたときにヒガキさんからのコールの数が極端に減ったのね」

「はい。ヒガキ様が自らの意思でコールを行っていた回数は1割程度だったということです」


春樹の慧眼に、恵理夜は感心するばかりだった。


春樹は、いち早くヒガキの視線の操作と、カードのイカサマを見抜き、場のカードから破棄されたカード――不利になっている数字を特定した。


恐ろしいカウンティング《記憶》能力だ。
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